富士山日記 富士山測候所に住んでみて
富士山日記 富士山測候所に住んでみて
登山シーズンの約二ヶ月の間、富士山は眠らない。
昼間でも真夜中であっても登山者たちが途切れることなくやってくる。
富士山には幾つかの救護所がある。それぞれの救護所には医師が24時間待機していて、無料で診察をしてくれる。
高校の同級生の医師が吉田口七合目の救護所にやってくるというので、僕も七合目まで下山し、富士山の医療現場を見せてもらった。
僕が救護所に一泊させてもらっている間にやってきた患者さんは二組。耳鳴りがして片耳が聞こえないという外国人と、高山病の女性だった。
この診療所にやってくる患者さんのほとんどは、高山病か外傷だ。診療所を開けている約二ヶ月の間にやってくる患者さんは140人ほど。人数は少ないけれど、やってくる患者さんたちの症状は重めだ。みなギリギリまで我慢してしまうからだ。
「患者さんが増えれば自分たちは大変だけど、我慢しないでもっと気軽に利用して欲しい」と友人の医師は言う。
富士山を医療を支えていく上で、一番難しいのは医師の確保だそうだ。
医師たちは、皆それぞれの忙しい仕事の、貴重な休みを使って富士山に来ている。たとえ一日二日しかない休みでも、それでも重い荷物を担ぎながら、救護所までの道のりを上がってくる。
ここに来る医師たちはみな、医学生だった頃に先輩の医師に連れられてここで寝泊まりし、飲み食いさせてもらいながら生の医療の現場を勉強させてもらった。
その恩は、いつか自分たちが医者になって返したい、そう思っていた。
吉田口七合目救護所が開局してから半世紀が経った。
恩返しのリレーはこれからもきっと続いていく。
毎朝の医療器具の消毒、掃除が医学生たちの仕事。
物資を多く運べない富士山では、昔ながらの火炎消毒や煮沸消毒が行われている。
富士山医療
2010年8月10日火曜日